音符の読み書きのこと(1)

前回のコラム更新から、いつの間にか季節は秋へ…ご無沙汰してスミマセン<(_ _)>
ここをご覧の皆さんにお伝えしてみたいなと思うこと、写真などは撮りためているのですが、日々の雑多に追われ、ついつい…^^;  またボチボチと徒然つぶやきたいと思います。

 

「なかなか音符が読めません」「リズムがわからないみたいで…」当教室へのお悩み相談のNo.1 はコレです。教室生だけでなく、よそで習っていらっしゃるお母さんからも相談のメールが舞い込むことが少なくありません。そこで、親はどのように捉えておくとよいのか、少し説明してみたいと思います。

 

音符というのはいわば、言語と同じと思ってください。日本にとってのひらがなやカタカナ、欧米にとってのアルファベット、韓国にとってのハングル…といった感じで、音符は音楽という国の言葉です。

 

ここで、皆さんが日本語を普通に使えるようになるまでの経緯を思い起こしてみましょう。

 

赤ちゃんのうちはしゃべれません。でも、お母さんやお父さんを始め、自分を取り巻くありとあらゆる環境で日本語に囲まれていくうちに、喃語(なんご/赤ちゃん言葉)から少しずつ、日本語を理解しますよね。やがて、2~3歳あたりから会話も成立し始め、意思の疎通もとれるようになったと思います。でもまだこの時、文字は読めていない子がほとんどです。

 

早い子で幼稚園くらいから、硬筆や公文などの教室で文字を習い始めたり、上の兄弟やお友達のするのを真似て遊びでお手紙を書いたり…などをきっかけとして、文字の「読み書き」が始まります。義務教育として、小学校1年生からは全員がひらがなから文字の「読み書き」を行います。ここから次第に、カタカナや漢字を習ったり、自分でも本を読んだりしながら、難しい言い回しや語彙が増え、自身の言語力が養われていきます。

 

日本人に非識字率(文字が読めないこと)が低いのは、こうして義務教育の中で国語として教育を受け、毎日のように日本語に接しているからです。江戸時代など昔は、会話はできても文字の読めない人はたくさんいましたし、教育が整備されていない国では今も識字率は低いままです。

 

音符やリズムもこれと同じで、「読めない」というのは非常に由々しきこと(そのまま放置しておくと後で問題が大きくなり見過ごすことができない)なんですね。

 

ひらがなが読めないと、漫画や絵本が読めないので楽しくありませんよね。同じように、音符が読めないと、自分の弾きたい曲が載っている楽譜を見つけても、どう読めばいいかわからず、弾けないので、楽しくありません。習い始めは簡単で短い曲なので、耳で覚えて雰囲気でなんとなく弾けますが、だんだん難度が上がり何ページもある曲になるにつれ、覚えきれずに行き詰ってしまう子がいます。

 

こうした子の駆け込み寺のようになっているのが当教室なのですが、言語領域(音符を含む)を習得するのにふさわしい年齢というのが、年長~小学校低学年あたりで、これを過ぎると定着しにくいといわれています(※)。耳で覚えたり、音符の上に読みがなを振ってそこだけを読んで弾く癖がついてしまった子は、なかなか癖が取れず、苦労しています。癖を抜くための地道な手順を踏むことに我慢ができず、元のやり方へ戻ってしまったり、我流でやってしまおうとしたりして、回り道になって辞めてしまうケースもあります。

 

※中学年以上で初めて習う子については、悪癖がついていないのであまり心配はありません。

 

ではどうすればいいか?ということですが、言葉を習得したときと同じように、やはり音符も毎日のように接していると、それだけ早く習得できるようになります。そして、習い始めの3年間が大切です。ここで毎日接する習慣がつかないと、後が苦しくなります。

 

相談なさる親御さんに、ご家庭での練習状況をお尋ねすると、ほぼどの方も「毎日はしていません」とのこと。人間、誰でも聖人君子ではありませんし、諸事情もあるでしょうから、私も全員100%の子が毎日やれるとは本当は思っていないのですが、せめて、一週間のうち練習していない日より、練習した日の方が多い という過ごし方をして欲しいなと思っています。

 

当教室では、その接し方のコツとして、ソルフェージュの手法を取り入れながら、無理なく簡単に、且つ、合理的に早く習得できる手順を指導しています。

 

簡単すぎるので、チャチャッといい加減に済ませちゃう子、我流でやっつけてしまおうとする子がいる場合もあって、これは回り道をしていることになるので、気をつけてくださいね。まずは「簡単なことをていねいに」にこだわってレッスンしています。

 

ちなみに、英語を習わせるご家庭も多いと思いますが、コチラも毎日英語に接していれば、習得できるそうです。以前にも書いたことがありますが、英会話教室を主宰している友人も、自分の子どもはバイリンガルなのですが、毎日2時間程度は「英語だけで会話をする時間」を設けてキープしているそうです。そうしないと、忘れるそうです。帰国子女たちも同じことを言っていました。

 

言い換えれば、英語もまた、週に一度教室へ通わせたからといって、家で何もしなければ、我が子が英語ペラペラになってくれるわけではない…ということなんですね^^;

 

とはいえ、大人になっても毎日のように日本語を勉強しているかといえば、私たちはそんなことをしなくてもちゃんと日本語は使えているわけで、ピアノも同じで、習得しさえすれば、毎日ピアノに向かわなくても読譜はできるようになります。親御さんには「ある一定期間だけだと割り切って、毎日しっかりピアノと楽譜に向かわせる」という気概を持って、ピアノ教室へ通わせるのが得策だと思っていただけると、習わせる甲斐があるのではと思います。(つづく)